俺学

・純国産鶏、自給率6%

(生活と自治 2010年3月号より抜粋等)

日本の鶏卵は95%の自給率を誇り、
生産と価格が安定していることから「物価の優等生」と称される。

ところが、
卵を産む鶏のうち純国産の鶏はわずか6%。

残り94%は海外由来、
つまり生産の元になる鶏の供給などを海外から受けているのが実情だ。

卵を産む鶏(採卵鶏)が
良質で均質な卵を安定して産み続けるには、
遺伝的に優れた系統を掛け合わせるなどの「育種改良」が必要で、
これを長期間、日常的に続けていかなければならない。

この育種改良の元となる「育種鶏」から、
鶏卵生産に優れた性質を持つ鶏を選別しながら増殖させ、
「原々種鶏」「原種鶏」「種鶏」を開発。

ここから生まれたひよこが養鶏業者の元で育てられ、
はじめて卵を生産する採卵鶏が誕生する。

世界的には
ヨーロッパの2大会社が独占的に「育種鶏」を保有しているため、
ほとんどの国の採卵鶏の元をたどると、この2杜に行き着く。

日本でも
これらの会社から原々種鶏や原種鶏を輸入し、
国内で増殖させているが、
その元となる育種鶏と育種改良は海外に依存しなければならない。

一方、
日本固有の純国産の採卵鶏「もみじ」「さくら」の育種鶏を保有し、
育種改良を続けている民間会社は
「後藤孵卵(ふらん)場」(岐阜市)の1社だけ。

同社の出荷するひよこは、
日本の風土や食文化に適した卵を産むように育種改良されているが、
この純国産の鶏卵は生活クラブのほか、
一部の生協などに出荷されているだけで、
鶏卵の消費全体からすれば、ごくわずかに過ぎない。

国内で育種鶏を守り育てていく重要な理由のもう一つが、
鳥インフルエンザの流行や災害などで
輸入がストップした場合のリスク予防だ。

「輸入が止まれば、3年間は原種鶏などの増殖で生産が保てるものの、
育種改良ができないため、
その後は良質な卵が手に入りにくくなる可能性がある」(日比野さん)と言う。

そんな貴重な純国産鶏の卵が存亡の機にある。

2008年の飼料価格の高騰は
養鶏農家に大きなダメ一ジを与えた。

その後、
飼料価格はやや値下がりしたが高値安定が続く中、
鶏卵の消費は低迷し、
卸売り価格昴唖が下がっている。

純国産の採卵鶏を採用しているのは
大半が中小の養鶏農家だが、
卵価の低迷により小規模農家を中心に毎年4~5%ずつが廃業。

今も生産を続ける養鶏農家が、
1~2年ごとにひよこを人れ替える際に、
純国産鶏よりわずかに安価で、
生産性の高い海外由来の鶏に切り替えてしまう恐れも出てきた。

後藤孵卵場でも海外由来の鶏に対抗するため、
生産性を高める育種改良を続けている。

しかし、
工業製品と違って、採卵鶏は「生き物」。

以前に比べて、
体形は小ぶりになり、
食べる餌の量も減ってきたが、
生産性を重視した改良には時間がかかる。

さらに育種改良にも多額の費用が必要なことから、
ひよこの価格もわずかに高くなってしまう。

このデフレ不況の下、
鶏卵はス一パ一の目玉商品として極端な安値で販売されることが多い。

卵価が安定しない限り、
ひよこにコストはかけにくく、飼料価格の再上昇も懸念される。

苦境に立つ養鶏農家が純国産鶏の採用をためらうのも無理はない。

こうした逆風の中で、
日比野さんは「低価格競争をしないで」と生産農家に訴え、
直売を勧めるなどして、
経営の存続も視野に入れた呼びかけを続けている。

「価格競争をすれば負ける。ただし、あまり高い値段を付けても駄目で、
卵なら1個20円から30円ぐらいが適正な価格帯。
それなら国産鶏でも十分に利益が出るようにしてやっていける。
価格競争に巻き込まれず、生でおいしいという国産鶏の希少性をアピールし、
自分の生産原価を分かってもらいながら出荷しましょうと話しています」
(日比野さん)

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