食、第一次産業、環境
・日本企業の技術を活用し、ビジネスで世界のゴミ問題を改善する
(皇紀2674年西暦2014年5月12日放送 未来世紀ジパングより)
「世界に貢献・日本のごみリサイクル
」
世界のゴミは
2000年に
81億トンであったが、
2010年には
105億トンになっており、
10年で、20億トン以上も増えてしまっている。
2050年の世界の廃棄物発生量の推計は220億トン。
(廃棄物工学研究所 推計)
カナダ・ユーコンのホワイトホース。
北極圏に程近いこの田舎町には、
美しいオーロラを目当てに数多くの観光客が訪れる。
しかし、そのいっぽうでゴミの問題を抱えていた。
街で出た全てのゴミが
分別されずに
ゴミの埋め立て地に運ばれてくる。
その量、年間約2万トン。
ゴミの山と化している。
ゴミの67%は
リサイクル出来るのに、
ほとんど手が付けられていないという。
その理由は、
小さな街にとって、
リサイクル施設建設はコストが掛かり過ぎるからだ。
現状、増え続けるゴミの山を見ているしかないのだ。
そんな中、
町で暮らす住民のひとりが
ある動画サイトですごい技術を目の当たりにした。
それは、ゴミを減らす画期的な技術、日本の技術だった。
それは
プラスチックのごみから
燃料となる「油」を生み出すという驚きの装置であった。
生み出された油は混合油だが、
精製して、
軽油、ガソリン、灯油、重油にする事で、
車やストーブなどの燃料として使う事が出来る。
1キロのプラスチックが1リットルの油になる。
現在、その装置はユーコンで使われており、今後さらなる導入が期待されている。
カナダのゴミをエネルギーの変えた一石二鳥のリサイクル技術。
実は、日本では見放された技術だった。
その技術を開発したのは、神奈川県平塚にある会社ブレストだ。
従業員たった9人という小さな会社が、
プラスチックごみを油に変える、油化装置を作った。
今では世界中から注文が殺到している。
ブレストは2001年創業のベンチャー企業。
2000年ごろ
日本ではゴミの量がピークになり、
リサイクルへの意識が高まっていた。
プラスチックは石油からできており、
これを使って、新しいビジネスにできないか、と。
そこで開発したのが
プラスチックを石油に戻す油化装置だった。
当時、
この技術は、
ブレストだけでなく、
大企業をはじめ、日本のメーカー各社が開発していた。
しかし、
日本ではプラスチックゴミの5割以上を焼却する。
取り組んでも、
採算が合わないと、多くの企業が撤退していった。
ところが
ブレストはあきらめず、装置の小型化に成功。
2009年、
動画サイトに投稿すると、世界中からアクセスが殺到。
再生回数は380万回を超え、大反響となった。
世界中がゴミの問題に困っていたのだ。
この日も平塚の会社には
ブラジル人のグループが見学に来て、すごい技術に驚いていた。
この油化装置が
ある美しい島国の悩みも解決しようとしていた。
その国とはハネムーンなどで日本でも大人気のタヒチだ。
タヒチは
そのシンボルである美しい海を守るため、すべての島のゴミを船で一か所に運ぶ。
その場所へ行ってみると
50年前から埋め立てられてきたゴミ処理場だった。
このままでは早ければ10年でいっぱいになるという。
そんなタヒチが頼るのが、ブレストの油化装置だ。
世界中では、
様々なゴミ問題があるが、
それを解決するのは、
大企業ではなく、ブレストのような中小企業。
大手の家電メーカーなんかだと、
新製品の開発会議をやると、
最低でも500億円くらい売れる市場じゃないとお蔵入りになる。
ところが、
中小企業だと、1億、2億、10億円でも採算が合う。
必要とされているのは
小さな町や島のニーズに、
どう対応していくかという事だから、
まさに
中小企業の出番だという事になる。
ブレストの油化装置の価格だが、
一番売れているものでも、およそ4000万円。
(1日の処理量1トン)
これなら途上国でも小さな自治体でも購入可能だ。
さらにポイントは使いやすさだという。
構造が簡単で、特殊な部品を使っていない。
どこの国でも手に入るようなものを使っている。
車の修理工場程度の技術があれば直せるという。
なので、
使いやすいという。
この装置は、日本でも使われ始めている。
埼玉県深谷市の長田紙業では、
プラスチックゴミを引き取り、燃料を生産。
発電機またはフォークリフトの燃料にしており、燃料の3割を賄っている。
このように、ゴミから燃料を作っており、
この事をいま、都市鉱山ならぬ、都市油田と呼ばれている。
ゴミはプラスチックだけではなく、
生ゴミや紙のゴミもある。
生ゴミや紙のゴミをバイオエタノールにする研究が進んでいる。
その技術を開発したのが、京都市環境政策局。
生ゴミ・紙ゴミ1トンから
バイオエタノール60リットルを生み出す装置を作り出した。
このように日本のリサイクル技術は高いものがある。
しかし世界では、
ゴミの分別もリサイクルもままならない国もある。
これからゴミが
どんどん増えていくのは途上国。
経済成長著しいインドネシアでも
日本の中小企業の技術が活躍している。
経済成長とともに増えるのがごみだ。
インドネシア第二の都市
スラバヤ市のゴミ最終処分場には、
毎日1300トン以上のゴミが運ばれてくる。
街ではゴミを分別する習慣がないという。
処分場にゴミが捨てられるなり、
悪臭漂うゴミに人が集まってくる。
彼らはウェストピッカーと呼ばれ、
拾い集めた資源ゴミを売って
生活している貧困層の人々。
スラバヤ市だけでも、
こうして暮らす人が数千人居るという。
川沿いに立つ家屋からは
ごみがそのまま捨てられ、埋まっている。
雨の日は、
ごみが流れ出てたまり、
水が堰き止められ、洪水になることもあるという。
そんなインドネシアで、
ある日本人が教えたゴミの処理法が根付いているという。
生ごみを「タカクラ」というバケツに入れておけば
通常ならば2~3カ月掛かるところ、
2~3週間、早ければ1週間で堆肥にできる「魔法のバケツ」だ。
これまでスラバヤ市では
増え続ける生ごみに頭を悩ませてきたが、
2002年北九州市と提携。
北九州市から派遣された技術者
ジェイペック若松環境研究所の高松さんが
この魔法のバケツを開発。
一軒一軒訪ね歩き、現地に根付かせたという。
そのためタカクラと呼ばれている。
このタカクラ、いまや8万軒に普及。
ゴミの排出量は約30%も減った。
さらに、堆肥により植物が良く育ち、美しい緑の街へと生まれ変わった。
タカクラを根付かせた北九州市。
公害を克服した経験を活かし、海外への環境協力を積極的に行ってきた。
そして今、
国際協力から国際ビジネスへの転換を図っている。
その際、武器となるのは中小企業の高い技術だ。
今、後押しをしているのは、西原商事。
従業員数100人ほどのの会社だが、
産業廃棄物を資源にリサイクルするエキスパート。
そのノウハウを活かせると
すでに2013年12月インドネシアのスラバヤに進出していた。
スラバヤ市・西原商事共同分別所で行っているのは家庭ごみの分別。
ベルトコンベアーで仕分けし、ゴミをプレス機で圧縮。
さらに生ごみを堆肥にする施設も作った。
ゴミ処理をここまでする企業はインドネシアでは初めてだ。
ここで働くのは皆、
カネになるゴミを拾って生活していたウェストピッカーであった。
西原商事がリサイクルゴミを大量に回収、分別すれば、
ウェストピッカーの仕事を奪う事になる。
そこで彼らウェストピッカーを雇う事にしたのだ。
西原商事で働くようになり、
娘をいい学校に行かせる事が出来るようになったなど、
彼らの生活は一変したという。
日本のリサイクル技術がインドネシアの人々の暮らしをも豊かにした。
インドネシアのゴミに対する意識が変わってきた。
その意識の高まりを表す例として、ゴミ銀行というのがある。
インドネシアの人が自発的に始めたと言われている。
ゴミを持って行くとお金が貯まるという仕組み。
キッチリ分別したゴミを持って、
ゴミ銀行に行くと、
ゴミの量に応じて、お金に換算してくれる。
例えば、古紙は1キロで10円、プラスチックは1キロで3円だ。
通帳にお金が貯まり、月に1回下ろせるのだ。
ゴミ銀行のおかげで分別の意識も高まっているという。
番組締め括りの未来予測では、「ゴミが成長戦略に!」と。
今、世界中でゴミの問題を抱えている。
一方、
日本には世界に通用する、
高いリサイクル技術を持った中小企業が数多く存在する。
世界にニーズはあるものの、
中小企業単独では、なかなか海外に出られないのが現状。
そこで、鍵になるのが、国や地方自治体。
国や地方自治体が
外国の地方自治体と連携し、日本の中小企業を紹介する。
そうすると、
日本の中小企業が活躍できる場所が増える。
世界のゴミ問題も改善する。
例えば、
参考になる戦略として、先ほど挙げた北九州市の取り組みだ。
北九州市は海外の自治体と連携し、
そこに地元で活躍する中小企業を送り込んでいる。
すでにインドネシアのゴミのリサイクルだけでなく、
中国の省エネ事業やベトナムの浄水処理事業、
インドの電子機器リサイクルなどでも成果を上げている。
自治体が地元の中小企業を後押しして、海外で利益を得る。
その成果が日本を活性化させる。
世界にニーズがあり、マーケットがあるので
そこに日本の技術を持ち込んで活躍してもらって、
そこで得た利益が日本に戻り、
関連する日本の産業が活性化される仕組みを作るべき。
これこそ、
日本の新しい成長戦略になると、
沸騰ナビゲーターの山口さんは言う。
日本のリサイクル技術を活かし、
世界で問題になっているゴミ処分に貢献しつつ、
ビジネスとしても利益を上げ、
ウィンウィンの関係を築き、
日本の中小企業(大企業でもいいけども)を活性化させる。
そのためには国や自治体の信用という支援が不可欠である。